不妊治療の研究は、この10年間の間で飛躍的な進歩を遂げました。こうした生殖補助医療技術は、子供を望む夫婦に多くの恩恵を与えた反面、私達に対して新たな問題定義を作り出してもいます。
今までの不妊治療といえば、女性の排卵を活発にさせて妊娠の機会をより促すというものが主流でしたが、近年では精子だけに止まらず卵子、もしくは受精卵そのものを提供することで、妊娠を成功させるということも行われています。子供の父母がいったい誰になるのか、生命倫理上どこまで認められるのか、有識者だけではなく、一般の人にとってもこの問題は人間関係や社会的な認知においても問題になっています。
こうした状況に対して、日本の法は現行の民法に沿っており、代理母、代理出産、夫婦間以外の精子や卵子の提供などについての法の整備が未完成な状態にあります。法務省法制度審議会において、2003年7月に生殖補助医療によって出生した子供との親子関係に関する民法上の特例をまとめ、民法の特例規定を作り法案の提出を目指しましたが、今もって法制化はされていません。不妊治療を行う夫婦の中には、海外での生殖補助医療を行う人もあり、ますます命の扱いかた、親子関係について、現実に沿った解釈が求められる反面、生命操作のいき過ぎによるモラルの崩壊が起きないような制度の確立も重要だと言えるのではないでしょうか。
